美味い牛肉って何だと思いますか?
茨城では「常陸牛(ひたちぎゅう)が日本一美味い牛肉だ」
宮城では「仙台牛が世界一だろ」
その地域地域で地元の銘柄牛を推しているし、美味いと信じている。
僕は食肉卸、営業をしていて、常日頃からこの「答え」を探し続けています。
13年食肉卸をしている私は、過去に忘れられない旨味を持った牛肉に出会ったことがあります。
食べた瞬間に、「うまっ!!!」っと心の声が外に溢れてくるほどのインパクトがあったほど。
その牛の名は、「但馬牛」。
ということで、今回は日本牛肉界の頂点にいるであろう「但馬牛」を紹介していきます。
・全国銘柄牛のルーツは但馬牛
・但馬牛の歴史
・美味しさの秘密はオレイン酸とイノシン酸
美味しさのルーツは但馬牛にあり
但馬牛と聞いて、「ああ!あの牛のことね!」と分かる人はかなりの通です。
関西に住んでいる人や、兵庫に住んでいる人にとっては馴染み深い牛でしょう。
「神戸牛」または「神戸ビーフ」と聞いたら、一気に知っている人が多くなるはず。
神戸ビーフ=但馬牛(厳しい規格、基準を満たしたものに限る)なのです。
2020年に新型コロナウイルス前までは海外の観光客がこぞって、この神戸ビーフを食べに来ていたと言う話です。
では
但馬牛のポテンシャルは神戸に留まらない。
日本各地の美味しいと言われている有名銘柄牛のルーツは但馬牛にあるのです。
ご存知「松坂牛」
江戸幕府献上の「近江牛」
佐賀牛、前沢牛、田村牛など但馬ルーツの牛は数知れず。
ではなぜこんなにも但馬牛に熱狂してしまうのか?
700年の歴史が繋いだ普遍的な美味さ
もともと但馬牛は、但馬地方で飼育されていた。
主に農耕用であったり、ものを運んだりするための役牛として人と歩んできた。
特徴としては、小柄で力強く、少ない飼料で良く育つコスパの良い牛であった。
雪が多くどうしても閉鎖的になってしまう但馬地方では、この但馬牛の血統を守る形になっていた。
時は今から100年前、牛が肉牛として食べられるようになった。
ここからは想像を語ります。
そこで霜降りが入りやすい但馬牛のポテンシャルに気づいた各地の牛飼いたちが自分の地元に連れて帰ったことにより、各地の牛が霜降りの入りやすい牛へと品種改良された。
当時の牛飼いはコスパが良くきれいな霜降りが入るこの但馬牛と地元の良質な牛(体が大きいなど)と交配を繰り返し今の形になっていったとさ。
とは言え、現代なぜこんなにも但馬牛が肉好きの魂をがっちり掴んで放さないのか。
それは、但馬牛の「霜降り」に人が美味しさを感じているのではないからだ。
但馬の旨味は小豆色の赤身にあり!
牛肉の旨味は「霜降り」の強さで語られるようになったが、最近では「赤身ブーム」というものがよく耳にします。
ようやく肉本来の味に気がついたのかと思いきや、「霜降りがきつくて胃がムカムカする」「脂肪が多くて太りそう」などという反動で来た健康志向赤身ブームが発端です。
たしかに霜降りが強いお肉を食べると、食べ慣れてない人は胃もたれを起こしたり、下痢になったりする。
しかし必ずしも悪い要素だけではない。
なぜなら和牛の脂はオレイン酸を多く含んでおり、悪玉コレステロールを減らし、善玉コレステロールを増やしてくれます。
エクストラバージンオリーブオイルの主成分と聞いたらわかりやすいですよね。
つまり、動脈硬化や心筋梗塞のリスクを下げてくれる効果を期待できます。
つまり摂るべき脂と言うことになりますね。
ここからが1番重要なところです。
牛肉の旨味成分はイノシン酸で、赤身の部分に多く含まれている。
但馬牛の最も偉大な特徴は、このイノシン酸たっぷりの小豆色と称される赤身だったのです。
まとめ
但馬地方の過酷な環境が但馬牛の純血を守り、結果として日本が世界に誇る美味しい神戸ビーフに繋がったと言ってよいでしょう。
とは言え、昔の牛飼いもサシの魅力に心射貫かれて赤身の美味しさに気づけなかったのはしょうがないことだと思います。
なぜなら「霜降り」は牛一頭一頭違う世界に1つだけのアートなのだから。
あなたのお肉ライフが充実したものになれば幸いです。
それではまた。